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ロスチャイルド |
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ロスチャイルド家の当主であったナサニエル・ロスチャイルドにお目にかかったことがあります。
その時はシェル石油の会長でもあったのですが、52歳で引退し、イギリスのヒース首相にたのまれてイギリスの経済問題、国家戦略を立てるような13人くらいのグループのトップの立場でした。彼らのオフィスの中でお会いしました。
色々とお話をしている時に、壁にかかっている2頭立ての馬車の写真を見ていたらシマウマで引っぱっていたんですね。私が「これは何ですか?」と聞くと、「私の祖父がちょっと変わった人でね。こんな風にして街を歩いていたんですよ。」というお話しでした。
私が「ロスチャイルド家の27部屋くらいある邸宅には、かつてビクトリア女王が泊まられたこともあったそうですね。私は、そこを拝見してきたことがあるんですが、あのお家は今はどうなっているんですか?」とお聞きしたら「今はもうお荷物だから政府に全部差し出しました。」と言ってました。ちょうど社会党系の党が政権を握っていた時でしたが、税金問題もあって手放したようです。あんなものはあってもどうしようもないと言うので「では、どこにお泊まりなんですか?」と聞いたら、「これだけの体格をどこかに横たえるところがあればいいんです。」という感じのことを言っていらしたんですね。世界の富の何分の1かを持っているほどの大富豪であるにもかかわらず。
私が「あなたの人生に取って、どんな時が最も感動的な瞬間でした?」と聞いた時に、急に体を乗り出すようにして、何か目もギラギラさせながら「それは、ヒトラーが自殺したと聞いた時なんです。」と言うんですね。ヒトラーが、もしイギリスに上陸してロンドンにも迫ってきた時には、いつでもそれを飲もうと思って、ポケットの中にモルヒネのカプセルをしのばせていたそうです。「ヒトラーが自殺したと聞き、そのカプセルをトイレに入ってポンと流した瞬間、本当に心がすっきりしたし、あの感動は忘れられません。」と言われたんですね。
彼は、先祖がイギリスに来てから7代目です。ロード・ロスチャイルドという貴族のタイトルまでいただいているイギリス国籍の人が、人生で最も感動した瞬間がユダヤ人である運命から開放された時だったと言う。ユダヤ人だから、ヒトラーがきたら自殺しようと思ってたのかもしれない。その時にはじめて私は、ユダヤ人っていうのは何なんだろう、宗教なのか、民族なのか?このことをきっかけにして私はユダヤという問題にも大変興味を示しはじめたんですね。
ロスチャイルドさんは、後で私をお家に呼んでモーツアルトとかショパンのピアノ曲を演奏して下さったんです。ああ、こういう一面もあるのかと思うと同時に、ただ大富豪と思われているのがいやなんだなと感じられました。「ケンブリッジ大学に行ってみて下さい。私が科学の学士号を取った論文もまだ残っているし、その時に私が作った機械も今だに動いているんですよ。是非見てきて下さい。」と少年のように顔を輝かせて言ってました。
やはり、ただお金持ちに見られるのではなく、自分にはこういう面もあるんだよというのを、一生懸命私に見せたいというか見せて下さいました。私はロックフェラーにもお会いしていますけど、なにかロスチャイルドさんの方が人間味があるような、そんな感じを受けました。 |
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